みちのくの先例

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国内でオープンな定例会を開催している非電源系ゲームサークルの内、ウォーゲームに特化したサークルは1990年代の業界冬の時代に激減してしまい、2000年の時点では人口100万人以上の大都市にしか残っていなかったものの、2000年代に入るとネット経由の出戻りによって人口100万人未満の地方でも新規にサークルが発足するようになった。

……という話は、ウィキの方の「日本卓上ウォーゲーム略史」で既に書いているが、そうした地方の新規サークルの成立過程に関する話が約20年の間に忘れ去られてしまっているようなので、改めて振り返ってみることにする。

というのも、地方在住でウォーゲームの対戦相手が近場で見当たらない、という投稿を近年SNSで目にすることが少なくないからだ。

VASSALで通信対戦すればいいだろ、というのも一理あるけれど、VASSALはパソコンでしか使えず、スマホしか持ってない人は決して少なくはないし、目にかかる負担も無視できない。やはり、オフラインで対戦できる機会もあるに越したことは無い。

しかし、地方は人口や交通の便など、大都市と比べて条件が悪い。先週の話は首都圏での卓上ウォーゲーマー予備軍を念頭に置いていたが、それとは異なる方法が地方では必要になる。

で、参考にするために、改めて2000年代に地方で新たに誕生したサークルの成立過程を振り返ってみるのだが、2002年に発足した青森ゲーマーズネスト(AGN)が大変良い先例になっていると個人的には思っている。

AGNは、八戸市在住のパパス氏が、近場で対戦相手が見当たらないということで、ニフティのホームページサービスを使って「ソリテア・パパス」という個人ホームページを開設してソロプレイの記録を公開してみたところ、(八戸市ではないものの)同じ青森県内の人が検索でそれを見つけて対戦を申し入れてきて、何度か個人レベルで対戦を重ねた後、県中央部の七戸町で定期的にゲーム会を開催することになった……というのが発足の経緯だった。

残念ながら、ニフティのホームページサービスは2016年で終了してしまい、「ソリテア・パパス」も現存していない(インターネットアーカイブにも残っていない)が、パパス氏は2004年に別途ブログを開設していて、そちらの方は更新が続いている。AGNもユーロゲームのプレイ頻度が増えてはいるものの、コロナ禍を経て活動が続いている。

ということで、地方在住でウォーゲームの対戦相手が近場で見当たらない、という人は、県レベルで構わないので居住地を明らかにした上で写真とハッシュタグ「#ウォーゲーム」が入ったソロプレイの記録をSNSでタレ流すことを強く勧める(Togetterでまとめも作れば尚良し)。

で、めでたく近場に住んでいる人からSNS経由で対戦の申し入れが来て、個人レベルでの対戦を重ねた後、正式に定例会を開催するサークルを発足させることになった場合、AGNの「持ち回りゲスト制」も大変良い先例になっていると個人的には思っている。

「持ち回りゲスト制」とは、定例会で毎回、レギュラーメンバーの誰かひとりを「ゲスト」として扱い、そのゲストがプレイしたいゲームを最低ひとつはプレイする、という制度で、現在のAGNでも継続しているかどうかはちょっと不明だが、AGNの非公式サイトにはこの制度による2002年から2012年までの定例会の記録が残っている。

人数が決して多くはない地方のサークルの活動を維持して、なおかつメンバー全員のプレイアイテムのレパートリーを増やす上で、この持ち回りゲスト制は大変素晴らしいアイデアだと個人的には思っているのだが、同様の制度を導入しているサークルを見たことが無い。もったいないと思う。

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