ソムリエからコンシェルジュへ

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2006年から2015年まで運営していた旧サイトを知っている人であれば、そこに投稿していたコラムの中で、新規の非電源系ウォーゲーマーを増やすには個々人でバラバラな嗜好を明確化した上で個々人に合ったゲームを選んでおすすめするソムリエが必要……といったことが書かれていたことを覚えている人もいるかもしれない。

その影響か、今でもSNSで時折、ソムリエという言葉を使っているウォーゲーマーを目にする。しかし、当の言い出しっぺが卓袱台返しをしてしまうことになるけれど、今となってはソムリエという言葉を使ったのは適切ではなかったと思っている。ワイン飲まないから。

父方の家系の下戸が遺伝してハードリカーはトリハイでも頭痛がするし、二十歳になって間も無い頃は丁度出たばかりのザ・カクテルバーを色々と試し飲みしてみたけれど、やはり頭痛が起きがちだった。結局、地ビールブームの中で国内外の様々な個性派ビールを試し飲みしてみた末にギネスが気に入って、二十代の頃は新宿東口や宗右衛門町のダブリナーズに度々足を運んでいた。だから、その頃からワイン(やポン酒)との縁は薄い。

……酒の話をしたいのではない。ウォーゲームに話を戻す。

2010年代に入ってTwitterを使うようになって以降、「非電源系のウォーゲームというものをちょっと試してみたい」という段階の人(や、いわゆる出戻り予備軍)によるウォーゲーム絡みの投稿を度々目にするようになったが、その結果、本当に必要なのはソムリエよりももっと包括的なコンシェルジュなんじゃないかと思うようになった。

というのも、そうした人はそもそも現時点での出版元や小売店や同好会の情報すら詳しく知らないことが少なくない。全国各地の人口100万人以上の大都市では、オープンな定例会を開催するサークルが2000年の時点から活動を続けているけれど、そうした大都市在住者であっても近場のサークルを知らなかったりする。

先週の話とも関連するが、こうした「非電源系のウォーゲームというものをちょっと試してみたい」という段階の人(や、いわゆる出戻り予備軍)が適切な情報源に辿り着けないという問題は、既存のウォーゲーマーの多くが10年以上に渡ってネットやITに関する技術力の向上を怠ってきたことによる発信力不足も一因になってしまっている。仕方無く拙作の国内リンク集へ誘導したことも何度かあったものの、手前味噌すぎるから本来はあまりやりたくない。

そもそも、1996年に大学のサーバーを間借りする形で最初の個人サイトを作った時からずーっと国内リンク集は歴代の個人サイトで公開と更新を続けているけれど、四半世紀以上もそうしたことを続けてきたのは、同じように適切な情報源に辿り着けない期間が長かった、という苦い経験が動機となっている。

小学2年で偶然「ドイツ戦車軍団」を手に入れたものの、様々な不運が重なって高校に進学するまで小売店にも専門誌にも辿り着けずに孤立していた、という話は何度か繰り返しているが、四半世紀以上も卓上ウォーゲームのリンク集とか各種目録とかを個人サイトで公開しているのは、「現代マンガの全体像」ならぬ「現代卓上ウォーゲームの全体像」をざっくり大摑みででも概観できる日本語サイトがあれば、同じように孤立してしまう人を少しでも減らせるのではないかと思ったからだ。

とはいえ、四半世紀以上経ってもまだまだ理想とは程遠い。様々なリンク集や目録に加えて国内の略史も一応書き上げたけれど、欧米の略史は全く手付かずだし、用語集の類も無い。もっと言ってしまえば、そもそもそんな総合情報的なサイトは個人、それも俺みたいな好き嫌いが激しくて性格が悪すぎる奴ではなく、グループで作って運営するべきものだけれど、そういう機運は、いまだ無い。

で、このような「卓上ウォーゲームのラストワンマイル問題」への対処として、総合情報的なサイトに加えて、ゲムマ会場で「ウォーゲーム・コンシェルジュデスク」を開設できないものか、と数年前から考えている。

ゲムマ会場では伝統ゲーム体験コーナーやTRPG体験コーナーが設けられているのだから、首都圏のサークル同士でカネとヒトを出し合って、オンライン・オフラインを問わないゲームの入手方法とかオープンな定例会の開催情報とか通信対戦の方法とか、卓上ウォーゲームに関するありとあらゆる質問に答えるコンシェルジュデスクを設ければ、首都圏を中心とした国内市場はもっと活性化するかもしれない。

現状、国内の商業パブリッシャーの所在地が事実上、関西ばかりで首都圏に無い状態が30年以上続いていて、(事実上の)パブリッシャー主催によるゲーム会も関西でしか開催されていない。つまり、パブリッシャーと直接会う機会が関西では豊富なのに対して、首都圏ではゲムマくらいしか機会が無い。だから、首都圏のウォーゲーマー自身が首都圏のプレイヤー人口を拡大すべく、手弁当でそうしたことができないものか、と思う。

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