凸凹心身:身体操作

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発達障害持ちであるがゆえ、心身の諸々不具合が日常生活のQOLに悪影響を及ぼしている事例として、先々週は感覚過敏を挙げて先週は過集中を挙げたが、つまり発達障害は心身の適切なセルフコントロールが難しい。

定型発達者の身体感覚がオートマチック車とすれば、発達障害者の身体感覚はシフトレバーすら無いアクセルとブレーキだけのバギーに相当する。だから、筋肉の適切な力加減もやりにくい。普段は緩みすぎて体幹も握力も弱い一方、筋肉を使う場面では力みすぎてしまって、すぐに疲れてしまう。

だから、学校の体育の授業はおおむね苦手だった。球技も縄跳びも上手くできなかったし、失敗して球や縄が体に当たると感覚過敏で痛いから、尚更苦手意識が強くなってしまった。鉄棒も逆上がりができるようになるまで時間を要した。

唯一、水泳(特に素潜り)だけは得意だったが、これは弛緩している方が浮きやすく、水中では水の抵抗があって元々体を動かしにくいので通常より力をかけすぎても問題になりにくいのに加えて、潜っている最中は五感に対する刺激が緩和されるのが却って心地良かったからだった。

体育以外では、図工や技術の授業も出来が悪かった。水彩でも油彩でもグラデーションが上手く作れなかったし、木工も彫刻もガタガタな作りになってしまった。

学校以外だと、家で折り紙を作ったりブロックを組み立てたりトランプで塔を建てたりするのは比較的得意だったけれど、道具を手で持ってパーツを切ったり貼ったりするプラモデルやペーパークラフトは上手く作れなかった。自転車で転ぶことも多かったし、ローラースケートやアイススケートは摑まり立ちがやっとだった。

ファミコンをかなり早い段階で親に買ってもらった(コントローラーのA/Bボタンが四角いゴム製の初期型だった)ものの、素早い操作が必要なアクションゲームやシューティングゲームはどれも苦手で、主にプレイするのはアドベンチャー/ストラテジー系に偏っていた。

結局、コンピューターゲームはアクション系が多いので、あまりソフトを買うことは無く、スーファミ以降の据置型ゲーム機を新規に買うことも無かった。上の妹はコンピューターゲームに興味が無く、下の妹は初代のゲームボーイを買ってもらったものの、やはり発達障害の傾向が強かったのであまりプレイすることは無かった。

髭が生えるようになると、カミソリで剃れば毎度のように洗面台が殺人事件の現場のように血まみれになってしまった。大学を卒業して会社勤めを始めた頃、初代のワンダースワンを買ったものの、ソフトは結局「GUNPEY」と「クレージー・クライマー」しか買わなかった。30歳になったのを機に親元を離れて一人暮らしを始めた時に、電動シェーバーを買ってゲーム機は実家に置いてきた。

それから15年近く経って、40代も半ばの2018年になって急にレトロゲーをプレイしたくなり、中古品の3DSを買ってバーチャルコンソールのレトロゲーをダウンロードしまくったものの、程無くしてアクションゲームやシューティングゲームが苦手だったことを思い出した。相変わらず、「ゼビウス」ではアンドアジェネシスを攻略できないし、「シティコネクション」ではおじゃまネコを轢きまくる。

自分で自分の身体を上手く操作できない、という不全感を、物心付いた頃からずっと抱えていた。

そして、日常生活において特に支障を来しているのが文字の手書きで、いまだに筆記用具が上手く持てない。箸は幼少期の頃から日常的に親と一緒に食卓を囲むことが多く、その際に持ち方を適宜矯正されたから問題無く持てるものの、筆記用具の持ち方をしっかり教わる機会は無かった。

一本一本の指の適切なポジションと力加減の感覚が摑めず、乱視で筆記用具の先端の距離感も摑めず、その上20代の頃にPalmデバイスを使い倒したことで「溜めを作らず手首を浮かせて先端がギリギリ触れるくらいの距離感で一気呵成に一筆書きする」悪癖が身についてしまった(厄介なことに、タブレットの手書き文字入力も、素早く入力するにはそうした書き方がむしろ向いている)。

そして30代半ば以降は、加齢と共に元々弱かった握力が更に弱くなって、悪筆に拍車が掛かってしまっている。

見てくれは健常者のくせに人並みのことが出来ない、という劣等感を、日々抱えて生きざるを得ない。

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