資本の引力

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あらゆる物体は引力を持ち、質量の大きな物体ほど強い引力を持つ……というのが万有引力の法則だが、資本もまた、ある種の引力を持つと言えるだろう。

何らかの商売をするにあたっては、元手が大きいほど、沢山作れる、沢山仕入れられる、沢山雇える。そして、それによってコストも下げられる。だからこそ、商売人は元手=資本を増やそうとする。そして、元手が大きくなれば、競合他社を吸収合併したり、より多くの融資や投資や株主を得られたりして、更に元手が増えてゆく。

経済活動が自由放任であれば、そのようにして富は偏ってゆき、貧富の格差が拡大してゆく。それは社会の不安定化をもたらすので、有史以来、多くの政府があの手この手で富の極端な偏在を解消しようとしてきた。累進課税制度や独占禁止法の類はその典型だろう。が、グローバル化によって現在、各国政府は巨大資本に対して劣勢に立たされている。

アメリカのデラウェア州は会社の設立や解散が他州に比べて容易な会社法が制定されていて、法人税率も低い。それゆえ全米の企業の多くが登記上の本社をデラウェア州に置いている。グローバル化によって、そうしたことが全世界規模で起きるようになってしまった。トマ・ピケティはグローバルな累積資本課税を提唱しているが、タックス・ヘイヴンを宣言する裏切り者が1ヶ国でも存在すれば、そんな手は通用しない。

資本主義陣営対社会主義陣営という冷戦が資本主義陣営の勝利という形で終結して30年経ったが、富の偏り・貧富の格差という問題は冷戦終結時よりもむしろ大きくなってしまった。グローバルな世界で巧みに課税を逃れる巨大資本は、ブラックホールのように世界の富を呑み込んでゆく。根本的な解決策は、いまだ見えていない。

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