長い江戸時代・その3

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江戸時代に確立した、「同じ職場で同じ面子で同じ仕事をずーっと続けてゆくのが真っ当な働き方」という労働観は、2000年頃を境にどんどん崩れてしまっている。このことは、忠臣蔵の人気凋落からもうかがえる。

忠臣蔵の人気が凋落した原因として、ただでさえ映画やテレビで時代劇を作るコストが上昇してしまった上、キャストが50人以上にもなるので尚更費用も時間もかかってしまい、新たに制作しにくくなっている、ということが理由としてしばしば挙げられるが、ただ単にそれだけなら現代劇に翻案することだって可能だし(実際、「サラリーマン忠臣蔵」なんてものもあったりする)、小説やマンガだったら尚更コストがかからない。にも関わらず、新たな忠臣蔵が一向に作られなくなってしまったのは、結局の所、忠臣蔵の内容そのものが共感を得られなくなってしまったから、ということに尽きる。

元禄赤穂事件とは、身も蓋も無い言い方をすれば、江戸城内で刃傷沙汰に及ぶようなヤバいトップと、そんなヤバいトップのせいで失業したのにも関わらず、ヤバいトップの遺志を継いで刃傷沙汰の相手を大人数で寄ってたかって殺害した後に集団自殺する、これまたヤバい(元)部下という、ブラック職場の自爆以外の何物でもない。

そのようなブラック職場の自爆譚が共感を得られなくなったというのは、同じ職場で同じ面子で同じ仕事をずーっと続けてゆくことが理想視・当然視されなくなったから、ということに他ならない。ヤバい上司・ヤバい職場からはとっとと逃げるが勝ち、という職業観が擡頭したことによって、忠臣蔵はオワコンになった。

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