情報と消息

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アングロサクソンが英語においてインフォメーション(information)とインテリジェンス(intelligence)を分けて扱うのに対して、日本人は両者を一緒くたに「情報」と扱っていて、それゆえ意志決定に支障を来している……という指摘は、古くからしばしばなされている。

オックスフォード英語辞典のオンライン版だと、informationの語義の筆頭は「The imparting of knowledge in general(知識の伝授全般)」、intelligenceの語義の筆頭は「The faculty of understanding; intellect(理解する能力・知性)」となっている。

これだけだと今一つ違いが判然としないので、手持ちのロングマン現代英英辞典を引いてみると、informationの語義は「facts or details that tell you something about a situation, person, event etc(ある状況・人・出来事などについて何かあなたに伝える事実や詳細)」、intelligenceの語義は「the ability to learn, understand, and think about things(物事について学び、理解し、考える能力)」そして「information about the secret activities of foreign governments, the military plans of an enemy etc(外国政府の秘密活動や敵の軍事計画などについてのinformation)」となっている。

informationに比べてintelligenceの方が、意志決定や問題解決に資するもの、もしくは機密性の高いもの、といった感じの使い分けがなされていると言えるだろう。

ここまでの内容だったら、これまでにも日本ではさんざん語られてきただろう。が、本稿はこれでは終らない。実は、支那語や朝鮮語でも「情報」と「消息(もしくは信息)」という言葉の使い分けがなされているのだ。

百度百科では、情報の語義は「越过空间和时间传递给特定用户,解决科研,生产中的具体问题所需要的特定知识和信息(空間と時間を越えて特定の者に伝えられる、科学研究や生産における具体的な問題を解決するのに必要とする特定の知識や信息)」、信息の語義は「泛指人类社会传播的一切内容(広く人類社会に伝えられる一切の内容を指す)」となっている。

ネイバー国語辞典では、情報の語義は「관찰이나 측정을 통하여 수집한 자료를 실제 문제에 도움이 될 수 있도록 정리한 지식. 또는 그 자료(観察や測定を通して収集した資料を実際問題へ助けになるようまとめた知識、またはその資料)」、消息の語義は「멀리 떨어져 있는 사람의 사정을 알리는 말이나 글(遠く離れている人の事情を知らせる言葉や文)」となっている(実際には人以外の物事についても使われている)。

現在の日本では「消息」という言葉はニュースソースをぼかす為の「消息筋」とか「消息を絶つ」という成句くらいでしか使わないが、こうして見ると、支那語や朝鮮語ではintelligenceという意味で「情報」が、informationという意味で「消息(や信息)」が使われていると言えるだろう。つまり、informationとintelligenceがごっちゃになっているのは東アジアにおいても日本だけ、と言えるのだ。

追記
かなり長めの補足的なものを書いた。

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