かくも長き広報の不在

Pocket

日本の卓上ウォーゲーマーは1990年代後半から2000年代前半にかけて個人ホームページを開設していた人が結構いたものの、2000年代後半以降は却ってそれがアダとなってしまい、ブログ・ウィキといったCMSやスマホやSNSへの対応が遅れてしまっていて、結果、パソコンを持たずにスマホでパケットをギガバイト単位で消費して動画コンテンツやSNSを堪能するような若年層に情報が十分に届いてなく、アプローチに失敗している……といった主旨のことを以前にも書いたが、3年以上経ってもあまり事態が改善しているようには見えないので、改めて今回は「具体例」を挙げることにする。とはいえ、個人を槍玉に挙げるのはアレなので、サークルによる例会の予告・報告という広報活動を俎上に載せることにする。

2023年4月13日時点で、日本の卓上ウォーゲームのサークルがネット上で例会の日時と場所を予告したり例会開催後の結果(や開催中の実況)を報告したりする手段としては、以下のものが使われていることが確認できる。

  • 公式サイト(ブログや掲示板も含む)
  • Twitter
  • Facebook
  • MustAttack
  • mixi
  • ボドゲーマ(の「ボードゲーム会/イベント情報」ページ)

そして、コロナ禍以降も例会を開催していることが確認できるサークル別に、これらの手段をどれだけ使っているのかをまとめると、以下のようになる。

サークル名公式サイトTwitterFacebookMustAttackmixiボドゲーマ
札幌歴史ゲーム友の会×役員連絡用××
ミドルアース東京支部ここ10年以上は予告のみ×××××
杉並ボードゲーム同好会×予告のみ×
ソフィアゲームクラブ×××
ゲームサークル坂戸参加者による不定期な報告のみ××××
GGG(Good Gamers Group)××××
YSGA(横浜シミュレーションゲーム協会)英語による予告と参加者による不定期な報告のみ××××
千葉会報告のみ××××
ちはら会×××××
茨城歴史ゲームの会コロナ禍以降は掲示板で予告のみ報告のみ×ここ10年ほど不使用××
両毛れきし研究会公式サイトなし報告のみ××××
浜松ボードゲーム同好会基本的に予告のみ×2019年以降不使用×予告のみ
TSS(東海作戦研究会)予告のみ参加者による不定期な報告のみ×××
SOLGER××××
ミドルアース大阪本部不定期に報告のみ×××
グレイフォックス公式サイトなし××××
AGW(Army Group West)予告のみ×××××
広島・ゲーム・サービス××××
松山六角会報告のみ×メンバー限定公開××
沖縄ウォーゲーム会公式サイトなし××××

こうして一覧にしてみると、全ての手段をフル活用しているサークルは無い上に、それぞれの手段の使用頻度も結構バラついていることがわかる。以下、手段別に講評を。

ほとんどのサークルが公式サイトを持ってはいるものの、その活用度は結構ピンキリあって、例会の予告のみというサークルもある。また、解像度の低いちっこい画像を少ししか貼れない古臭い掲示板を使っていてビジュアル的な訴求力が低い所も少なくない。海外の掲示板で解像度が高くてデカい画像がガンガン貼られているのを長年見てきたので、余計にそう感じてしまう(具体的には、先日ひさしぶりに更新した「亜州卓上戦棋概説」を参照)。

逆に、公式サイトを一切持たずに広報手段はTwitterのみ、というサークルも3つある。SNS全盛の御時世なんだから公式サイトなんて要らないでしょ、ということかもしれないが、職務上、SNSが禁止されている人も依然としていたりするので、特定のアカウントを持っていなくても閲覧・書き込み・連絡が出来る手段が用意されている方が望ましい(実際、上記のサークルの主催者などで、そういった理由からSNSを使っていないと推測される人が複数いる)。今ならスマホでの閲覧・更新にも対応した無料ホームページくらい、Wix.comとかでサクッと作れる。

そして、様々なSNSの中では、やはりTwitterの使用頻度が最も高いものの、その活用度も結構ピンキリあって、ブログとTwitterを両方使っているのに連携をしていないサークルが結構ある。大抵のブログサービスにはSNSとの連携機能があって、ブログ側の環境設定であらかじめTwitterの特定のアカウントと紐付けをしておけば、ブログで新規に記事を投稿すると自動的にその記事の投稿を告知するツイートをしてくれるように設定できるのだが、その機能を活用していないサークルが結構ある。結果、ブログに比べてTwitterが広報不足になってしまっている。もったいない。

また、せっかくTwitterを使っているのにも関わらず、例会予告でTwiPlaを使っていないサークルも結構ある。まぁ、これについては今後、イーロンの気まぐれでサービスが消滅してしまうかもしれないけど。

Facebookの活用度も、海外に比べれば極めて低い。Twitterで十分だし、実名顔出しはしたくない、ということだろうけれど、個人的にはもったいないと思う。

逆に、MustAttackは元々がウォーゲーマー向けなので、ここで積極的に広報活動を展開しても新規勧誘の効果はそれほど無いような気がする。

mixiも今更……という気がしないでもないが、今後、Twitterがダメになってしまった時の避難先としてキープしておいても、いいかもしれない。

そして、ユーロゲーマーにお試し・ひやかし感覚で来てもらうのでも構わない、というのであれば、ボドゲーマでの広報活動もやっておくべきだろう。実際、ウォーゲームをちょっと試してみたいけれど近場でプレイしている所がわからない、というユーロゲーマーのツイートを目にして然るべき場所へ誘導したことが何度かあったので。

他にも、ブログで使っているスキンがスマホやSNSが登場する以前の古い形式のまんまだとか、例会の会場を紹介するのにグーグルマップを活用していないとか、新規参加・見学希望者向けの具体的な連絡先がどこにも明記されていないとか、細かいアラは色々ある。全体的に、広報活動で改善すべき余地は、まだまだいっぱいある。

俺は四半世紀前、立命館大学シミュレーションゲーム研究会を存続させられなかった。そのことをいまだに後悔している。だから、名古屋のTSSみたいに一昨年、古くからの常連メンバーが立て続けに三人も亡くなったのにも関わらず、予告も報告も不十分な広報体制を見直さない姿勢には反感を覚える。

とはいえ、こうした広報活動をサークルの代表者だけに任せっきりにするべきではないとも思っている。理想を言えば、サークルの代表者とは別に広報担当者を設けるべきだろう。ウォーゲーマーなら広報活動の重要性くらい、「空飛ぶ広報室」で認識済みでしょ?

Pocket