表計算ソフトの用途

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個人用のコンピューターでよく使われるアプリケーションソフトのひとつである表計算ソフトもまた、アメリカで育まれてきた。しかし、その主な用途は現在に至るまで、日本とアメリカでは大きく異なっている。そして、日本とアメリカでの表計算ソフトの主な用途の違いとは、税制の違いに端を発している。

アメリカでは、自営業者だけでなく給与労働者も確定申告が義務付けられている。しかも連邦税だけでなく州税もあり、州によって内容が異なる。そのうえ連邦税も州税も毎年のように内容が改訂される。当然、面倒臭い。

だから、アメリカでは表計算ソフトの誕生以前から、1年間の所得と様々な税金や控除の割合や金額、そしてそれらの計算式だけを入力すれば、計算自体は自動的に代行してくれるソフトウェアの潜在的需要があった。そして、そのような潜在的需要を満たすソフトウェアがあれば、全米の企業だけでなく個人が一斉にそれを買い求める。つまり、マーケットがめちゃくちゃデカい。

ゆえに、アメリカでは表計算ソフトがパソコン市場に大きな影響を及してきた。世界最初のパソコン用の表計算ソフトだったVisiCalcはリリース当初、Apple IIでしか稼働しなかったので、VisiCalcとApple IIをセットで購入する者が続出して、これによってアップルはパソコンメーカーとしての地歩を固めた。

そして、そのアップルが新たにリリースしたMac用にマイクロソフトが開発した表計算ソフトが、Excelだった。Excelは「マウスで操作できる表計算ソフト」というのが開発コンセプトのひとつで、当時マウスを標準で実装しているパソコンはMacしかなかったので、最初はMac版しかなかった。

マイクロソフトがパソコン用ソフトウェアの市場で覇権を握った要因として、もっぱらMS-DOSWindowsでOSのシェアを制覇したことばかりが挙げられるが、Mac用にExcelを開発することによって、マウスで操作するソフトウェアの開発ノウハウを習得し、更にそれをWindows環境へ移植することによって、MS-DOS環境で表計算ソフトのシェアトップだったLotus 1-2-3を打倒して表計算ソフトの巨大なマーケットを制覇したことも大きい。

他方、日本では給与労働者は基本的に所得税が天引きで、確定申告の必要が無い。それゆえ、自らの稼ぎがどれだけ税金として徴収されているのか意識しにくく、税金の使い道が議論される場である議会への関心も薄く、代議士や選挙への関心も薄い……ということはしばしば指摘されているが、表計算ソフトが単なるデジタル方眼紙として使われる現象もまた、元を辿れば給与労働者が確定申告をする必要が無いことが原因として挙げられるだろう。

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