最初の言語

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自然人類学の最新の知見によれば、我々現生人類は東アフリカから全世界に拡散していったという「アフリカ単一起源説」が主流となっている。が、そうであるならば、どうにもわからない事がひとつ、ある。何故人類の言語は全世界でこんなにもてんでんばらばらなのだろうか?黙って全世界に拡散してから同時多発的に言語を使うようになったとでも言うのだろうか?それとも、東アフリカでバベルの塔のような出来事が起きたとでも言うのだろうか?

発音がてんでんばらばらなのは、まだわかる。プロのミュージシャンの間では、外国のスタジオで録音すると湿度の違いによって音の伝わり方が違ってくるというのはよく知られている(湿度が高いほど、低い音が伝わりやすくなる)。湿度だけでなく、気温や気圧、そして大気中の成分の違いによっても音の伝わり方は違ってくるので、当然、人の声の伝わり方も違ってくる。つまり、気候の違いが発音の仕方に影響を与えても不思議ではない。また、食生活の違い(主に固い物を食べるか柔らかい物を食べるか)によって顎の発達の度合いや歯並びが異なってきて、これが発音の仕方に影響することも考えられる。そもそも、話し言葉の発音は同化弱化音挿入音位転換といった変化が起きやすい。

だが、語順がてんでんばらばらなのは、なぜなのか。日本語や朝鮮語・モンゴル語などは主語(Subject)→目的語(Object)→動詞(Verb)という語順のSOV型言語で、英語やフランス語・イタリア語などは主語→動詞→目的語という語順のSVO型言語であることは割と知られているが、文が主語で始らない言語も結構ある。アラビア語やヘブライ語・タガログ語などは動詞→主語→目的語という語順のVSO型言語で、マダガスカル語やキリバス語・セデック語などは動詞→目的語→主語という語順のVOS型言語に属する。そして、文が目的語から始るOVS型言語やOSV型言語も少数ながら存在する。

乳幼児が使う言葉は、最初は1単語だけで、それから徐々に複数の単語を組み合わせて使うようになる。ならば、現生人類の最初の言語も、1単語のみを発するものだっただろう。そして、全世界の諸言語の語順がてんでんばらばらなのは、現生人類が東アフリカから全世界へ拡散する過程で複数の単語を組み合わせて使うようになったから、と考えられないだろうか。加えて、ラテン語は特に語順が決っていなかったので、人類が複数の単語を組み合わせて使うようになっても、最初は特に語順が確定していなかったのかもしれない。

録音機器はおろか、書き言葉も存在しなかった太古の言語の復元を試みるのは難しい。だが、様々な言語に触れ、日常的に母語以外の言語を読み書きしていると、言語の起源と全世界的な発展過程について想像をめぐらさずにはいられない。

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