動詞が先か?目的語が先か?

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MacやWindowsによってパソコンはそれ以前よりも使いやすくなったが、その理由については「GUIだから」という通り一遍な説明がなされることが多い。が、実はそれだけが理由ではない。キーボードからコマンドを打ち込んで操作するCUIと比べて、MacやWindowsは「オブジェクト指向」だった。とは言っても、ソフトウェアの開発者でもない限り、オブジェクト指向なんて言葉は知らなくても当り前なので、以下、解説。

タイプライターと似た感じのキーボードをコンピューターに接続するようになってから、MacやWindowsが登場するまでの間、コンピューターは基本的にキーボードからコマンドを打ち込んで操作するものだった。そして、そのようなコンピューターは主にアメリカで開発されてきたので、打ち込むコマンドも英語をベースとしてきた。例えば「a」という名前のファイルを削除する場合、UNIXでは「rm a」と入力する(rmはremoveの略)。MS-DOSでは「del a」と入力する(delはdeleteの略)。いずれも、SVO型言語である英語がベースなので動詞が先で目的語(オブジェクト)が後になっている。

これに対して、MacやWindowsでは先にファイル「a」のアイコンをマウスなどで選択して、その後にメニューから「ゴミ箱に入れる」を選ぶ(か、ファイル「a」のアイコンをゴミ箱のアイコンに放り込む)。つまり、先に何か操作したい対象=目的物(オブジェクト)を選んでから、後でその目的物を具体的にどう操作するのかを決める。英語ベースのコマンドと比べて、オブジェクトが先になっている。

で、このような「はじめにオブジェクトありき」な操作の方が直感的で人間の行動の仕方にも合致していて、ゆえに広く普及したのだが、勘のいい人は既に気付いている通り、これは日本語の語順にも合致している。

remove a
delete a
aを消す

オブジェクト指向がパソコン操作のトレンドになって以降、ソフトウェアの開発で用いられるプログラミング言語もSmalltalkObjective-CPythonJavaRubyといったオブジェクト指向言語が主流になっていったが、何の事は無い、日本人が母語としている日本語がそもそも英語よりもオブジェクト指向の強い言語だったのだ。

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