艦と艇

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軍事組織が保有して使う船舶の類を「艦艇」と言うが、海上自衛隊では排水量が1000トンを超えるものを「艦」、1000トンを超えないものを「艇」と呼ぶ。英語でも、例えば「戦艦」は「battleship」だが、「魚雷艇」は「motor torpedo boat」と呼ぶ。つまり、艦艇の大小によって「ship」と「boat」を使い分けている。

ところが、日本では一般的に「艦」と認識されているが、日本以外では「艇」と認識されていることが多い艦艇が存在する。それは、潜水艦(特に、原子力潜水艦ではない通常動力型潜水艦)だ。

日本では、潜水艦を潜水艦と呼ぶのは当然視されているが、例えばドイツのUボート(英語だと「U-boat」、元のドイツ語だと「U-Boot」)はshipではなくboatという扱いだし、排水量もおおむね1000トンを下回る(同時代の日本の伊号潜水艦はおおむね2000トンを上回っていた)。そして、支那語でも潜水艦は「潜艇」と呼ぶ。つまり、艦ではなく艇とみなしている。

水中では電波は(全く使えないわけではないが)極めて伝わりにくくなる。ゆえに、水上と比べてレーダーでは探知されにくくなる。もちろん、肉眼でも視認しにくくなり、探知するには基本的にソナーが必要になる。つまり、軍用の艦艇が水中に潜るというのは、水上よりも敵から見つかりにくくなるという秘匿性が得られるわけだが、しかし図体がデカくなればデカくなるほど、音が反射する表面積も大きくなり、推進機関も大きくせざるを得ないので、結果、アクティブソナーでもパッシブソナーでも探知されやすくなり、折角の秘匿性がどんどん相殺されてしまう。ところが、日本海軍は大きいことはいいことだとばかりに、戦艦や空母や巡洋艦のみならず、潜水艦も大型化を指向していた。

核ミサイルを搭載した戦略ミサイル原子力潜水艦でもない限り、水中に潜る艦艇が図体をデカくするのはメリットよりもデメリットの方が大きい。しかし、潜水艦を潜水艦と呼ぶことに疑問を覚えず、挙句、伊400型潜水艦を潜水空母スゴイなどと言ってしまう日本人は、水中に潜ることの軍事的メリットというものを、いまだ根本的にはわかっていないのではないのだろうか。

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