20世紀に世界で最も大きな影響を与えた革命は、間違いなくレーニンによるロシア十月革命だろう。が、それはマルクスが予測したような、人類が有産階級と無産階級とに二極分化したことによって起きたものではなかった。そうした二極分化は資本主義が行き着く所まで行き着いた、資本主義の最終局面で起きる現象であるとマルクスが予測したのに対して、十月革命当時のロシアは西欧よりも経済発展が遥かに遅れていた。当のレーニン自身、ロシアを後進国とみなしていた。
有産階級と無産階級の二極分化が起きる遥か手前の段階だったロシアでレーニンが起した十月革命とは、有産階級が最終的には打倒される運命であるのならば今すぐとっとと打倒してしまえという、いわば前倒し革命だった。もっと言ってしまえば、それは弥勒信仰的なシロモノだった。
いきなり弥勒なんて言葉が出てきて面食らっている人が少なくないだろうから、以下、解説。阿弥陀如来と弥勒菩薩は仏教の二大メジャー仏と言えるが、阿弥陀如来が来世救済を売りにしているのに対して、弥勒菩薩は現世救済が売りになっている。まぁ、現世は現世でも、56億7千万年後の現世だけれども。
しかし、たとえ56億7千万年後であっても現世救済を売りにしていると、56億7千万年後ではなく今すぐ弥勒菩薩が出現する、などと無責任なことを言って煽る輩が必ず現れる。それゆえ、弥勒信仰は歴史上、たびたび反体制運動の原動力になってきた。ロシア十月革命というレーニンの前倒し革命、そしてその後、そのような前倒し革命を模倣する形で世界中の中進国・後進国で続発した「自称」社会主義革命にも、全く同じような無責任な煽りを感じる。
マルクスが予測したような、資本主義によって人類が有産階級と無産階級とに二極分化した果てに起きるという革命は、いまだ、世界の何処でも起きてはいない。