チープとプレミアム

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近代に入って以降、日本の産業は基本的に「チープ戦略」だった。欧米の製品よりも品質は低いけれど価格は安いものを作ることで、内需を満たし、外貨を稼いできた。そもそも、欧米よりも技術力が低かったのだから、そうせざるを得なかった。

しかし、1980年代には日本の技術力は欧米に追い付き、それと同時に諸物価や人件費も欧米並みに高くなった。そして、今度はアジアの新興国がチープ戦略で擡頭してきた。

本来なら、この時点で戦略を転換しなければならなかった。すなわち、低品質低価格のチープ戦略から、高品質高価格のプレミアム戦略へ。

先進国か新興国かを問わず、富裕層が高い金を払ってでも享受したくなるような、極上のサービスや商品の開発に取り組むべきだった。

しかし、日本人は貧乏臭い。その上、バブルが崩壊したこともあって、「安く作って安く売る」ことに慣れきった日本企業は、新興国に対しても価格面で対抗しようとした。

日本より諸物価も人件費も安い新興国のチープ戦略に対して、価格面で対抗しようとすれば、最終的には人件費を新興国並みに抑えざるを得なくなる。1990年代以降、日本の労働環境が悪化していった原因は、ここにある。

チープ戦略からプレミアム戦略への転換に失敗してから約30年、日本はありとあらゆるものの水準が落ちてゆく真っ最中にある。要するに、先進国の地位から脱落しつつある。

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