アカデミー受賞作「パラサイト」で話題となった奉俊昊監督の映画は、長編デビュー作「ほえる犬は噛まない」以降、劇場公開された長編監督作は全て映画館で見てきた。
同じように、「ほえる犬は噛まない」あるいは長編第2作「殺人の追憶」以降、15年以上に渡って監督作品を追いかけ続けた人は少なくないだろう。そして、奉俊昊監督作は複数の作品で様々な共通点(地下の空間、犠牲になる少女、濡れ衣を着せられる智慧遅れ、など)が存在することも、長年追いかけ続けた人の間では知られている。
しかし、そうした共通点の中で、今の所、誰も指摘していないように思われる共通点が、ひとつ、ある。それは、「二文字姓の登場人物」だ。
朝鮮人の姓というと、金とか朴とか李といった一文字の姓ばかりが知られているが、極めて少数ながら「皇甫」「鮮于」「司空」「独孤」「南宮」といった二文字姓も存在する。そして、奉俊昊監督作品には、何故かこうした二文字姓の登場人物が必ずと言っていいくらい、頻繁に登場している。
「殺人の追憶」では、作中での連続殺人の犠牲者のひとりは「独孤」だった。そして「独孤」以上に諸作品で頻繁に登場するのは「南宮」で、「ほえる犬は噛まない」では主人公の大学院生の同僚が「南宮」、「スノーピアサー」では宋康昊演じる保安設計者が「南宮」、そして「パラサイト」では高台の豪邸の設計者にして最初の入居者だった建築家が「南宮」だった。
実際の朝鮮人全体に占める二文字姓の人口の割合と比較してみると、あまりにも不自然な割合で二文字姓のキャラクターが頻繁に登場している。「南宮遠」というベテラン俳優がいて、1972年に出演した「虫女」を奉俊昊監督は「時代を超える怪作」と「亜洲経済」のインタビュー記事で紹介しているが、「南宮」との繋がりはそれくらいしか見当らない。そもそも南宮遠というのは芸名で本名は「洪京日(もしくは洪京一)」だったりする。なぜ、こんなにも頻繁に二文字姓のキャラクターを登場させるのか、理由はよくわからない。