昭和49年に生れた時点で、オリンピックから10年経っていた。万博も、4年前に開催済みだった。オイルショックで高度経済成長も幕を下ろしていた。宴は、終っていた。
高校在学中にバブルが崩壊し、大学卒業時には就職氷河期だった。30歳になるまで過した実家には、母が持っていたオリンピックの記念硬貨と父が万博で撮った写真があった。オリンピックも万博も、上の世代の昔話だった。
だから、半世紀ぶりにオリンピックと万博の開催が決っても、特にこれといって高揚感は湧かなかった。「成功は一日で捨て去れ」と柳井正は言っているが、一日どころか半世紀前の成功体験に固執するしか能が無い老いぼれどもが過去の栄光に縋り付こうとしているだけとしか思えなかった。
半世紀前は、まず好景気だったからこそオリンピックや万博も成功したのであって、オリンピックや万博を開催することで好景気になるのではない。招致活動の時点で、全てが本末転倒だった。
しかし、それにしてもここまでグダグダなオリンピックになるとは思わなかった。ブルーインパルスの五輪のスモークを見上げても、何の高揚感も無かった。
日本の将来にも、自分自身の将来にも、明るい展望なんて見えない。