トワストの思い出

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とりあえず、冒頭に「War-Gamers Advent Calendar 2025」へのリンクを張っておく。

今から丁度20年前、2005年にアメリカのGMT Gamesから初版が出版された「Twilight Struggle(トワイライト・ストラグル)」は、1945年から1989年までの東西冷戦をテーマとしたボードウォーゲームで、初版出版時からウォーゲーマーだけに限らず広くボードゲーマー全般にプレイされるヒット作となった。

世界最大のボードゲーム専門サイト、ボードゲームギークでも2010年代前半に人気ランキング第1位の座に君臨して、20年の間に何度も版を重ね、世界中でローカライズ版もライセンス出版され、日本語版も2016年に出版されている。

長きに渡って広くプレイされてきた理由のひとつとして、一般的なウォーゲームが特定の地域の戦いだけを扱っているのに対して、東西冷戦は全世界的な出来事で、なおかつ比較的新しい出来事だったので、世界中どこでも、当時の雰囲気を実際に体感していたがゆえにゲームのテーマにも親近感を覚える人が多かったから、ということが挙げられるだろう。

冷戦末期の1981年に小学校に入学して1990年に中学校を卒業したが、ひょっとしたらアメリカとソ連の全面核戦争が起きるかもしれない(それも、1999年の7月に)という考えは、小中学生の分際でも常に頭の片隅にあったし、あの頃、同じことを考えていた人は決して少なくなかっただろう。

だから、2005年の初版出版時は即座に購入して、かなりの回数やり込んだ。それから20年が経った今、様々な思い出を勝手気儘に書き散らしてみることにする。


トワストを2005年の初版出版時から即座に購入して対戦を何度も重ねたのは、テーマに惹かれたから、ということだけではなく、それが新作だったから、ということも大きな理由だった。

小学2年生だった1982年に「ドイツ戦車軍団」を偶然手に入れたものの、小中学生時代には販売店にも専門誌にも同好の士にも出会えず、高校生になった1990年に「タクテクス」を読むようになって巻末に掲載されていたクラブ情報を元に大阪大学のシミュ研に出入りするようにはなったものの、周りは当然年上ばかりで、しかも対人プレイの経験値も圧倒的に差があったから、内心、ひどく気後れしてしまっていた。

そして、そうした経験豊富な年上のベテラン達が既にやり込みまくっているタイトルを対戦することになった場合、拙いプレイを披露しては失礼だから、事前にルールをしっかり読み込んでソロプレイも重ねた上で対戦に臨まなければならない、と、ガッチガチに身構えてしまっていた。

だから、阪大シミュ研に限らず、様々なゲーム会に顔を出しても、初見のゲーム(ほとんどは数年〜数十年前に出たタイトル)をその場で即座に対戦することには強い抵抗感を覚えてしまい、あまり対戦することが無かった。

阪大に進学できる程の学力は無く、「シミュレイター」で頻繁に名前が出てくる立命館大学に入ったものの、立命シミュ研では何の成果も挙げられず、失意のドン底に陥ったまま卒業してから5年後、2003年に再びウォーゲームと関わることにしてミドルアース大阪本部の定例会に出入りするようにはなったが、相変わらず気後れは続いていた。

しかし、そうした長年に渡る気後れに終止符を打ってくれたのが、トワストだった。新作であれば、古参も新参も同じスタートラインに立てる。だから、トワストだけはガンガン積極的に対戦した。特に、山根氏との対戦が大きな自信に繋がった。

当時、猛者揃いだったミドルアース大阪本部の中でも、特に山根氏はゲーム以外でも先物取引でアルミ2トンを買い取る羽目になりかけながらも最終的に売り抜けたり、アラビア語の能力を駆使してサウジで御禁制のエロ動画入りCD-Rを密売して荒稼ぎしたりする根っからの勝負師だったが、そんな山根氏相手でもトワストだけはバチバチにやり合えた。

こうしてようやく、経験豊富な年長者に対する気後れは一応解消した。

あれから20年経ったが、ウォーゲームに限らず、古典と新作についての考えは当時から現在まで変わっていない。どんな分野でも、古典だけしかない環境になんて新人なんかロクに入って来ない。だからこそ、新作は常に供給され続けなければならない。しからずんば衰退あるのみ。受け手も同じく、古典を抑えないのも古典しか抑えないのも、等しくダメ。

本筋から外れるので名指しはしないが、出戻ってもテメエからは旧作しかプレイしない輩や、ヤフオクで旧作を買い漁るだけの輩や、新作を入手する甲斐性は無いくせにいっちょかみだけはしたくて箸にも棒にもかからないクソリプばっかり飛ばす輩には心っ底虫酸が走る。昔話しか出来ねえくたばり損ないの老いぼれなんか要らねえんだよ、とっとと死ね。


新作だったから、という理由でやり込んだトワストだが、20年経てばもはや新作ではない。だから、現在では未経験の人に対して手離しではオススメできない。既にやり込んでいる人が多いから、ということだけではなく、トワストは技量の差が露骨に出やすいから。

カードドリブンのゲームは通常、同じイベントのカードが複数枚あることが多いけれど、トワストは例外的に100枚以上あるカードのイベントが全て異なる。それゆえ、カードのイベントをどれだけ多く把握しているかが技量の差にダイレクトに結び付く。

だから、経験の浅い者同士が対戦を重ねて互いにステップアップしてゆくのが理想的で、やり込んだ人が手ほどきする、という方法は向いていないと思う。実際、かつて大失敗してしまった。もりつち氏をインストでフルボッコにしてしまったのだ。

笑い話ではなく、もりつち氏はこの後トワストに限らずカードドリブンのゲーム自体しばらくプレイしなくなった、という非道いトラウマを植え付けてしまった。返す返すも非道いやらかしだった。

プレイヤー同士の間で技量の差が大きいのであれば片方にアドバイザーを付ければ?と思う人もいるかもしれないが、アドバイスの匙加減は結構難しい。プレイヤーが自ら試行錯誤する機会を、多かれ少なかれ奪うことになってしまうから。実際、YSGA(横浜シミュレーションゲーム協会)の定例会にお邪魔した時、たまたま山内会長と近藤氏がトワストを対戦していて、山内会長がほぼほぼ初プレイだったので後ろに立ち、ささやき女将よろしくあれこれ口出ししたのだが、あまり良いやり方ではなかったと、今では思う。

やはり、技量の差が出やすいゲームは同じくらいの技量の人同士で対戦するのがお互いに良いだろう。そして、リリースから時間が経ったゲームほど、初見の人同士のマッチングが成立しにくくなる。

だから、今から新たにトワストをプレイしてみたい、という人は、件の近藤氏がデザインした「江戸幕府の黄昏」を先にプレイした方がいいと思う。同じゲームシステムを採用していて、それでいて元のトワストと比べてルールもカードもエリアも少なめで、箱入りの第2版が今年出たばっかりだから。


初版からやり込んだトワストだが、実は現在、拙宅にあるのはGMT版ではなく、香港の戰棋會有限公司が2009年にライセンス出版した支那語版だったりする。
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これは2010年5月に台湾のコンベンション会場で買ったもので、日本でもこのコンポーネントでプレイしたことも何度かあった(一応、カードは和訳と一緒にスリーブに入れている)。

戰棋會有限公司は香港で長らくボードゲームの販売や輸入やライセンス出版を手掛けていて、かつては支那本土からの購入者も多かった。2010年8月に訪問した時は、圧倒的な品揃えを誇っていた。

しかしその後、香港そのものが支那本土に政治的・経済的に呑み込まれてゆくのと共に、戰棋會有限公司も支那語圏のボードゲーム市場における影響力が低下してゆき、2018年末にオフライン店舗を閉店した

トワストの続編に相当する「Imperial Struggle(インペリアル・ストラグル)」の支那語版も、戰棋會有限公司ではなく浙江省寧波市の原石卓遊が2022年にライセンス出版した。

スマホやドローンや電気自動車に比べればボードゲームの市場は微々たる規模だけれど、そんな所でも支那語圏における香港の地位低下を痛感させられた20年だった。


トワストはアジアにおいて日本語版や支那語版だけでなく、朝鮮語版も出版されている。「レオナルドダヴィンチ レスター手稿」や「モダンアート:韓国版」の出版で日本でも知られる京畿道高陽市のDiceTree Gamesが2016年にライセンス出版した。

しかし、ほとんどの日本人は知らないことだが、実はこのトワスト朝鮮語版、マップに例の島が描き足されている。明らかにGMTには無断で。

ざけんなチョン公。バレないとでも思ったか。

こちとら英語も支那語も朝鮮語も解して、アジア全域のウォーゲーム関連情報を収集・整理して毎月発信してんだ。当然、このことも9年前の時点で把握済みだ。舐めた真似しくさりやがって。

この20年間で支那語圏におけるウォーゲーム市場が一気に拡大して、日本を追い越してアメリカに次ぐ世界第2位の市場にまで急成長したのとは対照的に、チョン公どもはほとんど何の成果も挙げてこなかった。GMTのゲームのライセンス出版すら1桁台に留まり、国産の商業ボードウォーゲームは事実上「도그파이트 1917(ドッグファイト1917)」ただ1作のみ。人口500万人のシンガポールですら毎月ウォーゲームの定例会を開催して毎回多種多様なウォーゲームをプレイしているのに、首都ソウルですら「Flames of War」のブートキャンプを細々と開催しているだけ。個人レベルでの開封の儀やリプレイのネットへの投稿も乏しい。そのくせこうした政治的主張をこっそり仕込むことだけは熱心でいやがる。

国内市場が貧弱で他国でも稼がざるを得ないくせに、そうした稼ぎ先の主要国のひとつである日本に対して影でこっそりクソマウントムーブをかましやがる。どいつもこいつも歌って踊れる出稼ぎホストと同類だ。

ホビーとしての商業ウォーゲームは元々、欧米で生まれて発展してきたけれど、だからといってウォーゲームは欧米だけのものじゃない。経済発展著しいアジアでもパブリッシャーやプレイヤーが増えて当然だし、アジアをテーマに、アジア人自身がデザインするウォーゲームが増えてほしい。そう思ってきたからこそ、この20年間、微力ながらネットで様々な情報を発信してきた。だが、チョン公に対するそれは、全て無駄だった。

そもそもアジアどころか全世界でもぶっちぎりで出生率が低いヘル朝鮮に市場の将来性なんかクソ程も無え。ましてやウォーゲームの市場なんか成立するかよ。


グダグダ書き連ねてきたけれど、この20年間でのトワストに関する個人的な思い出は、こんな感じだった。

もう10年以上プレイしていないし、今後も自ら進んでプレイするつもりも無い。けれども、ウォーゲーム界隈に対する愛憎半ばする感情の相当部分は、トワストによって形作られてきた。

20年経った今、願わくはトワストとは異なる切り口で東西冷戦を扱った新作や、現在進行中の「新しい冷戦」をテーマにした新作が登場してほしい。ヒストリカルウォーゲームはベースになる歴史研究が現在進行形でどんどん進んでいるのだから、そうした最新の研究成果を取り入れた新作がどんどん出る方が健全な状態だと言えるし、そうした新作があってこそ、新人が気後れすることなく参入できるのだから。


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