ハイパーテキスト論語の帰還

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PHPラボに「ハイパーテキスト論語リターンズ」を追加した。何故「リターンズ」なのかと言うと、大学生だった20年前に初めて個人サイトを開設した時、作成したコンテンツの1つが「ハイパーテキスト論語」だったからで、その復活という意味を込めて「リターンズ」を付けた。

大学に入ってから学内のMacに触れたことは以前にも書いたが、それに伴って、その頃はパソコン関連の書籍を色々と濫読していた。その中の1冊、技術評論社の「電脳外国語大学」を読んだことが、論語のハイパーテキスト版を作るそもそものきっかけになった。

「電脳外国語大学」は、Unicode普及以前にパソコンで日本語以外の様々な言語の環境を構築・運用するノウハウが網羅された大部の共著で、執筆者の多くは大学関係者だった。その中に、フランスの文豪、バルザックの全作品のコンコルダンスをパソコンで作成する話が載っていた。

コンコルダンスというのは、特定の文学作品で使われている全ての単語と、その使用箇所を網羅した索引で、その作成は文学研究の基本作業と言える。しかし、多作で知られるバルザックの全作品のコンコルダンスを作るというのは、手作業では膨大な時間が必要になる。それをスキャナーとOCRで電子化することにより短期間で完成させてしまった、という話が衝撃的だった。

大学では文学部で東洋史を専攻していたから、漢籍も電子化して素早く参照できるようにしたいと思うようになった。しかし、MacもWinもUnicodeをOSレベルでサポートしていなかった当時、日本のパソコンで広く使われていたShift_JISコードでは使える漢字が極めて限られていたので、漢籍を電子化するというのは全く現実的ではなかった。教授陣はみな、ワープロ専用機でせっせこせっせこ外字を自作してレジュメを作っていたし、学生も含め、周りでは誰一人パソコンなんて使っていなかった。そんな中、これが東洋史研究の新潮流だ!とばかりに、たった一人、半ば意地になってゼミ用の資料をMacで作っていた。

そんな経緯があったから、漢籍を電子化する試みとして、論語の電子版を作ってみることを思いついた。とはいえ、テキストでは使える漢字が限られるので、当初はテキストを画像化してHyperCardのスタックにすることを考えていた。しかし、個人サイトの開設を計画するようになってから、目玉コンテンツのひとつとして、多少使える文字に制限があってもHTMLファイルにして公開することに決めた。

こうして最初の個人サイトで公開された「ハイパーテキスト論語」は、しかし、文字の制限を除いても、理想とは程遠い出来だった。というのも、ハイパーテキストと名乗っている以上、本文中のキーワードを全てリンクボタン化して、それをクリックすると同じキーワードが使われている章句だけが一覧表示されるような機能を実装したかったのだが、当時は動的なWebページを作成するにはCGIをプログラミングするくらいしか方法が無く、極めてハードルが高かった。キーワードのリンクが無い「ハイパーテキスト論語」は、実際にはハイパーテキストとは言い難かった。

あれから20年が経って、今ようやく、あの頃に思い描いていたような「ハイパーテキスト論語」を、自分で作って公開できるようになった。長い長い宿題をひとつ片付けたような気がする。

あーあ、20年もかかっちまった。

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