ウェブは典拠たり得るか

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大学職員の間で、URLを知らない新入生が増えている、という話が話題になっている。また、SNSでの投稿でURLを入力してリンクを張るのではなくスクショを貼り付ける若者が増えている、という話も話題になっている。そして、こうしたことを嘆かわしいとか情弱とか批判する人も少なくない。が、この件はどうにも批判しがたい。

というのも、スマホとSNSの登場以降、インターネットの使い方は、汎用的なウェブブラウザーを使って個別のサイトへアクセスする、という方法ではなく、個別のサービス毎に専用のアプリを使ってアクセスする、という方法が主流になってきているからだ。TwitterもFacebookもLINEもmixiもYouTubeもTicTokもNetflixもHuluもAmazonも楽天もヤフオクもメルカリも、専用のアプリをリリースしている。全国チェーンで自前のウェブサイトを持っている飲食店や小売店も、専用のアプリをリリースしている所が少なくない。その上、Googleも検索専用のアプリをリリースしている。つまり、汎用的なウェブブラウザーを使う機会が減ってしまっていて、それによってインターネットの利用者がURLというものを意識する機会も減ってしまっている。

何事も、汎用的なものよりも専用的なものの方が使い勝手は良い。十徳ナイフを思い浮かべれば想像がつくだろう。

それに加えて、そもそも同じURLがずーっと使われ続けることは、果してどれだけあると言えるだろうか。

インターネットが広く一般に開放されてから、四半世紀以上が経った。この期間に、ずーっと同じドメインで、ずーっと同じURLで、ずーっと同じ情報やサービスを提供してきたウェブページは、果してどれだけあると言えるだろうか。

フラッシュサイトは、消え去った。ジオシティーズは、消え去った。前略プロフィールは、消え去った。2000年代に次々と誕生したブログサービスも、2010年代には相当数が消滅した。そして、事業譲渡で運営主体が変ったりするなどの理由で、消滅はしないもののドメインが変ってしまう事例も少なくない。官公庁ですら、かつてはgoドメインを使っていない所があった。

ウェブサイトは、意外と、脆い。だからこそ、インターネットアーカイブウェブ魚拓といったサービスが存在している。同じURLで同じ情報やサービスをずーっと提供できているサイトは、極めて少ない、と言わざるを得ない。

だから、ウェブは典拠たり得るか?と問われれば、否、と答えざるを得ない。

このサイト自体、1996年に大学のサーバーを間借りする形で開設して以来、四半世紀の間にサーバーを何度も移転して、ページの中身や構成も何度も変えている。そして、今後も再びドメインが変ることになる。というのも、2021年時点で使っているサーバーはSSL/TLSに対応していない古いサーバーなので、HTTPS化するにはサーバーを変えざるを得ないのだが、そうするとドメインも変えざるを得ない。そして、Googleが今後、HTTPS化していないサイトを検索対象から外す可能性は十分ありえるので、そうなる前に再びサーバーを移転せざるを得ない。そのため、サイト内でのリンクは全てドメイン名を含まない相対パス指定にしている。

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